本研究会は、実際のLSIチップの開発を行うことができるオープンソースのEDAツールの開発、および既存のオープンソースEDAツールの運用に関するノウハウの収集・共有を目的としています。
そのために、オープンソースEDAフォーラムなどの集会、勉強会などを企画し開催します。
【背景】
従来はLSIチップの設計・製造は垂直統合型の大手半導体メーカーが行っており、設計ツールも内製ツールが使われていたため、社内で研究・開発を行う体制が確立していました。
その後、1980年台後半から独立したEDAツールの開発・販売が行われるようになり、主要なEDAツールは内製ではなく外販ツールが広く用いられるようになりました。
このEDAツールが設計・製造メーカーと切り離されたことと相まって、LSIの設計だけを行ういわゆるファブレスとLSIの製造だけを行うファウンドリという形の水平分業体制が確立しました。
このような流れのなかで日本の各半導体メーカーは設計・製造のどちらにおいてもあまり優位的な地位を確保できずに研究・開発体制が縮小している感があります。
とはいえ,機械学習を始めとしたAI応用技術、DX、IOTなど最近の社会基盤技術に必要な要素技術はすべて半導体製品を用いたハードウェアが必要不可欠です。
さらに、これらは既存のマイコンや通信機などの技術を使い回すのではなく、新しい技術を開発していく必要があります。
そこで、今一度、半導体の設計・製造技術の発展の一翼を担うものとしてEDA技術、特にオープンソースのEDAツールに関する技術・知識の研究や共有を目的として当研究会を立ち上げました。
【当研究会のねらい】
- EDA 開発者(研究者)にとって
通常、実際のLSI設計者は有料のEDAツールを使って設計を行っているため、設計における本当のニーズやシーズはEDAベンダ内の技術者にしか伝わりません。
一方、オープンソースEDAを用いて設計を行う場合、設計者とEDA技術者が直接、情報を共有することができます。
これは、国際会議や論文誌で他人の研究成果を追いかけているだけでは得ることのできない知見となります。
- LSI設計者にとって
もちろん、オープンソースのツールの利点は無料ということもありますが、可能ならば自分の都合で内容を書き換えられることでもあります。
そこで、個別の設計に特化した独自の設計方法論の構築なども行える可能性があります。そのためにはEDA技術者との密接な連携が必要となりますので、当研究会でそのような場を提供したいと考えています。